職員自己研鑽レポート

このページでは、事務所職員が自己研鑽のため勉強した内容を毎月報告させていただきます。

改正社会福祉法

1、社会福祉法人制度改革の背景

社会福祉法人制度改革の端緒となったのは、「社会福祉法人の在り方等に関する検討会報告書」である。この中では、現在の社会福祉法人について非常に厳しい指摘がなされている。他の非営利法人に比べ、財務諸表等の公表が遅れていること。また、盛んに報道もされた内部留保を無為に蓄積しているという指摘。さらには他の経営主体との公平性などである。
しかし、上記の指摘にある内部留保については、多くの法人はそのほとんどを基本財産として保有しており、法人の自由にできる部分は決して多くはない。また、他の法人との公平性についても、営利法人であれば赤字事業であれば撤退の判断をするが、社会福祉法人にあってはその性格上撤退とはいかない。その中で公平性という議論がどこまで妥当かという問題がある。
こうした中で、社会保障審議会福祉部会が社会福祉法人制度改革についての報告書を公表した。この中の制度改革の基本的な視点として、①公共性・非営利性の徹底 ②国民に対する説明責任 ③地域社会への貢献 の 3 点を示した。
これらの点を踏まえ社会福祉法の改正案が国会に提出されることとなった。

2、改正社会福祉法の概要

改正社会福祉法の中心は社会福祉の供給体制の整備にある。これは、法人の公共性・非営利性の徹底と国民に対する説明責任を踏まえたものであり、以下に示す

① 経営組織のガバナンスの強化
議決機関としての評議委員会を必置することとした。役員等及び会計監査人はこの評議委員会で決議し、評議員の理事との兼務は禁止となった。評議委員会を議決機関としたことで、理事会は業務執行機関に位置づけられることとなる。
さらに、一定規模以上の法人には会計監査人の設置が義務化される。それ以外の法人についても、公認会計士や税理士による財務会計の整備状況の点検、監事への登用が検討されている。
② 事業運営の透明性の向上
財務諸表、現況報告書、定款、役員報酬基準等の閲覧対象書類の拡大がされた。加えてインターネットによる公表が義務化されることとなった。
③ 財務規律の強化
理事、監事及び評議員に対する報酬等の支払基準の作成と公表の義務化と、これら関係者に対し特別の利益供与を禁止することで、適正かつ公正な支出監理を行うこととした。
また、批判の多い内部留保については、再投下可能な財産額(社会福祉充実残額)を明確化し、これを社会福祉事業等へ計画的に再投資していくため、社会福祉事業又は公益事業等の新規実施・拡充に係る計画(社会福祉充実計画)の作成が義務付けられた。この計画の作成にあたっては、公認会計士・税理士等及び地域住民その他関係者の意見を聞かなければならず、また、所轄庁の承認も必要である。
以上のものに加えて、地域社会への貢献を目的として、地域における公益的な取組を実施する責務を負うこととした。具体的には、生計困難者に対する無料・低額な料金による福祉サービスの提供等である。これはあくまで努力義務であるが、現状の批判を考えれば行わざるをえないだろう。

3、結論
以上が改正社会福祉法の主な内容である。改正の背景でも記したように、社会福祉法人の公共性・非営利性の徹底とこれを担保するための情報公開を進めるものであり、加えて、他の事業体では対応できない様々な福祉ニーズに応えることで、地域社会への貢献を果たすことを目指すものである。
その中で、概要にも示したガバナンスの強化、社会福祉充実計画の作成において、専門家として税理士の協力が求められており、社会福祉法人の運営について税理士が果たす役割は一層増していくものと考えられる。

平成 27 年 7 月 7 日
櫻井 俊介